
「うつはカゼをひくようなもの」と言われていたのは、過去の言葉になった。うつ的情態とは憂鬱(ゆううつ)で、生活全般にやる気がでない心の情態や、夜眠れなくなり、だるくて動きがとれない身体の状態である。心療内科や精神科を受診し、うつ病と診断されると、薬が処方される。でも、薬だけに頼りすぎると中々改善されず、長年飲み続けて副作用に苦しむ人々が多く存在する。
警察庁と厚生労働省の発表によれば、2020年度の自死者の数は2,919人である。コロナ禍において女性の自死者が増え、小学生・中学生・高校生たちの自死は479人で、前年度より140人増えている。遺書がないと変死にカウントされてしまい、突発的な自死を含めれば、実際の数はもっと多いと思われる。本当に驚くべき実態だ。また、20代30代の若者の死因の50%が自死で、その動機で最も多いのが、うつ病や双極症(そううつ病)によるものである。
うつ病と判断する前に、うつ的情態とは何かと問うことが重要だと思う。うつ的情態は、さまざまな世代に、突然現れる。でも、それは外側から見た場合であって、本人はかなりの期間、我慢し続けていると思う。子どものうつ、思春期うつ、過労うつ、管理職うつ、更年期うつ、等々。本人が「こうしなければならない」という考え方にとらわれていたり、または、家族や社会から「こうでなければ認めない」と、プレッシャーをかけられ続けると、ストレスによって、心がだんだんと疲れて崩れていくのだと思う。
近年の心理学研究で、長年(4年以上)うつ病をわずらっていると、双極症(そううつ病)に移行するすることが判ってきた。これは、希死念慮=自殺願望をいだく大きな要因になる。
2020年は有名な芸能人の自死が続いた。また、コロナ禍において経済的にひっ迫した状況が、女性の自死の増加につながっている。「死にたい」という思いは、他人に打ち明ける事は本当に難しい。特に、躁情態の場合、元気よく見えて自死を考えているなんて、はたから見たら判らない状況だと思う。
一人で悩み続けないで、心を開いて自分の苦しさを話してみよう。苦しんでる人の家族や友人は、その人の表情や態度を観察し、言葉の裏にある悩みに気づいてあげよう。そのような意識的な営みが、うつ病や双極症に気づき、自死を防げる最善の方法だと、強く思う昨今である。

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