家族療法と家族心理学

2020年度は、コロナ禍によって小中学生・高校生の自死が増加した。特に昨年の5月から夏休みにかけて、急増している。外出自粛によるストレスや、進路への不安、家族内での不和などが自死の要因だと推測されている。

私が、家族療法を学ぼうと思ったきっかけは、周囲で家族関係で悩んでいる人が多かったこと。家庭内暴力や暴言などによって、精神的に追いつめられた人がいたことだった。また、民族差別や人種差別、障がい者差別などの社会的差別に、押しつぶされそうになっている精神情態の人がいたからだった。 

地域に根ざした保育・教育実践を行うには、理論先行より、実践力の質や、人の心に感応できる能力が問われる。「○○すべきだ」「○○することが望ましい」という趣旨で実践を行うと、どこかで道を誤ってしまう。正論を主張しても、悩んでいる人には受け入れられない。また、プレッシャーを与えてしまう結果となる。

家族療法は、1950年代にアメリカで始まった。この時代は、フロイトの精神分析による臨床実践が始まって、半世紀たったころだった。家族療法は、個人の精神のみにアプローチするのではなく、家族全体の関係性を対象にして、アプローチしていく療法だ。
フロイトの精神分析は、個人の人格や記憶など、いわゆる「精神疾患」の原因は、個人の内=脳神経にあると考えた。 アンチ・フロイトとして生まれた家族療法は、家族のコミュケーションのあり方がうまくいかないと、生きづらさを抱えた存在が出現してしまう、という考え方だ。 

だから、家族の関係性は千差万別で、人間のパーソナリティも千差万別なのだ。人間は人間関係の中で育つ。
家族というくくりに必要以上にとらわれていたり、家族の理想像を押しつけたりすると、必ず、苦しむ存在がで出てくる。その存在は、子どもや青年が多い。非行にはしったり、引きこもりになったり、うつ情態になったりする。 

その状態を、当事者のパーソナリティーや、保護者の育て方に、原因を追究してしまうと、改善策を見い出すことはできない。1990年代以降、アメリカやヨーロッパでは、家族療法は医療機関だけでなく、学校現場や児童福祉施設、老人福祉施設などでも実践されるようになった。

日本では家族療法を広めるために、「日本家族カウンセリング協会」「日本家族心理学会」など、様々なNPO法人や社団法人が存在し、活動している。ブリーフセラピー、解決志向アプローチ、オープンダイアローグなどの実践方法を学んだ方々によって、新たな取り組みをしている地域団体や、セラピスト養成団体が存在している。
私も、いくつか経験したが、自分の生育歴や、気づかない心の内を、認識することができた。 

アルフレッド・アドラーは、アドラー心理学として、日本においてはこの10年ぐらいで有名になった。フロイトやユングと同時代の研究者だが、これまで2人の業績に隠れて、なかなか、陽の目をみなかった。
でも、人間の成長には共同体感覚が重要であると、主張し続けた。そして、子どもの家族内教育や、公的教育機関に働きかけ、熱心に教育問題に取り組んだ研究者であった。家族心理学の原点である。

=アドラーの言葉から=
子どもたちに もっと勇気と自信を与えることで
また 子どもたちに 困難は克服できない障害ではなく 

それに立ち向かい 征服する課題であると見なすよう 教えることで
すべての子どもたちについて その精神的な能力を 
刺激する努力をすることを 主張する